ラーメンコミック・改

今日もいつもと変わらない日常。

突然炎の如く、一通のメールがメールボックスを揺らす。

 

拝啓

突然のメール大変失礼致します。

私は、◯◯テレビのディレクターの◯◯と申します。

この度、貴方が8月7日付けのブログに書かれた「ラーメンコミック」というタイトルの記事について、私の手掛ける「世にも珍妙な物語」という番組でテレビドラマ化させていただきたくご連絡させていただきました。

 

え?何だって?!世にも珍妙な物語っつったら、あのタボリがストーリーテラーをやってる〝まるでヒッチコック劇場〝みたいなあの番組か!若手監督、若手脚本家の登竜門と言われ、あの石井俊三が無名時代に撮った「打ち上げ乳首 股下から見るか横チンから見るか」もこの番組で放送されていた。マジか!

メールはこう続く。

 

しかしながら、若干のリライトをしていただく必要があります。まず、「汚マンガ」という表現。あの表現が放送コードギリギリなので、何か別の単語に変更願います。

 

ちょっと待てよ。あの記事は、あの単語のもつダブルミーニング的響きをニヤニヤしながら楽しむだけの出落ち記事だぞ。あの記事からあの部分を奪っちまったら、後には何にも残らないじゃないかよ!

 

それと、実名のマンガも色々と権利関係があるので、変えて下さい。ただし、ドラゴンボール、ワンピース、サザエさんに限り、使用可能です。

 

まあ、これは仕方ない。しかし・・・サザエさんか・・・。

 

さらに、テレビ的には落ちが弱いです。もう少し猟奇的でパンチのある落ちにリライトしていただけませんでしょうか。

 

猟奇的?猟奇的でパンチのある落ちってどういう事だ?わけわかんねぇぞ。

 

現在、配役は、松軽豊さんを起用する方向で調整中です。

 

松軽豊っつったら、「グルメの如く」のあの俳優だよな。ということは、俺のあの話を猟奇的でパンチのあるグルメ話にしろっていうのか。無理だ。断ろう。

 

ちなみに原稿料ですが、著作権料込みで300万円でいかがでしょうか。ご検討の上、ご返信いただけると幸いです。宜しくお願い申し上げます。

 

よし、決めた。この話、受ける。

さっそくリライト作業に取り掛かった。

 

【ラーメンコミック・改】

 

ラーメン屋に入る。

注文を終えると、部下(女子:配役は、吉岡里帆を希望)がふらりと席をたち、マンガを持って帰ってきた。そのマンガがとにかく汚いのなんの。

「おい、メシ前にそんな汚いマンガ持ってくるんじゃないよ。食欲が失せちゃうよ」

「課長、知らないんですか。これ、ワンピースですよ」

「え?」

「ワンピースっていうマンガですよ。めちゃくちゃ面白いんですよ」

「だから?」

「このマンガの戦闘シーン、書き込みが物凄く迫力あるんですけど、買ったばかりの綺麗なマンガだとなんか今ひとつなんですよね。この、ちょうどラーメン屋さんに置いてあるぐらいの汚さが、ページに絶妙な効果を生んでるんですよ。いわば、ジーンズのダメージ加工みたいなものです。この味は、なかなか出せないんですよ。もはや芸術の域です。私は家にワンピース全巻揃えてるんですけど、改めてここで読み直してるんです。新たな発見があるんですよ」

「それにしても汚いだろ」

「あ、これ実は、煮込んでるんですよ」

「え?」

「ここのラーメン屋さんのスープ、ワンピースでダシとってるんですよ」

「うそだろ」

「うそで〜す」

「おいおい」

「いいから読んでみて下さいよ」

「え〜、俺、こういう絵柄苦手なんだよな〜」

「課長って、どういうマンガが好きなんですか?」

「俺?サザエさんとか」

「あ〜」

「なんだその微妙なリアクションは」

「ラーメン屋さんに似合わないマンガ読んでますね〜。はっきり言ってヌルいというか」

「うるさい。長谷川町子ディスるんじゃない」

・・・ん?このマンガ、面白いな。次、どうなるんだ?

「どうですか?面白いでしょ」

「うん、まあな」

「この汚れた感じが、またいいでしょ」

「まあ、なんか懐かしい感じはするな」

「これなんて言うか知ってますか」

「なに?」

「汚メガです」

「お、汚メガ・・・」

その日から俺は、汚メガの魅力に取り憑かれてしまった。ページをめくるたびに鼻腔を突き刺す汚メガの臭いを味わいたいが為に、ラーメン屋に通った。ワンピースを読破した後は、ドラゴンボールという汚メガにふさわしいアクションシーンが迫力あるマンガを読破した。

帰宅して、本棚に綺麗に並べられたサザエさん全45巻+よりぬきサザエさん全13巻を見る。汚さないように、ページを開きすぎないようにと、神経を使って大切に大切に読んできたサザエさん全45巻&よりぬきサザエさん全13巻。これを全部煮込んでやりたい衝動に駆られた。刹那、棚のはしから乱暴にサザエさん全45巻&よりぬきサザエさん全13巻を剥ぎ取り、寸胴鍋にぶちこんで、豚骨と鶏ガラを加え、弱火で3日間煮込む。十分に煮込んで汚メガ化したサザエさん全45巻&よりぬきサザエさん全13巻を取り出し、むしゃぶりついた。美味い。やっぱりサザエは美味い。いや待てよ。サザエといえば、やっぱりつぼ焼きだよな。そうだよ、つぼ焼きだよ。なんだってんで全巻煮込んでしまったんだ。サザエの魅力が全然引き出せてないだろ。突然、サザエの汚メガを炭火でつぼ焼きにして、楊枝でくり抜いて喰らってやりたい衝動が抑えられなくなってきた。サザエの名産地といえば、長崎県。松軽豊は、長崎県へと向かった。長崎県の漁港では、なぜか吉岡里帆が偶然待っていて、「一緒にサザエの汚メガをクリクリくり抜きましょう」という台詞を、極めて可愛らしい調子で言うではないか。そして2人はウエットスーツに着替え、長崎の磯に潜る。一通りダイビングを楽しみ、ほどよく疲れた後、長崎チャンポンの店でサザエさんを探すが、どこの店にもサザエさんは置いていない。あるのは、ワンピースとドラゴンボールばかりだ。サザエさんは、もはや絶滅危惧種となっていた。落ち込む松軽豊。雨の長崎のバーで一人ヤケ酒を飲む松軽の元に、有力な情報が届く。長崎県には無いが、佐賀県になら現在もサザエさんを置いているラーメン屋がたくさんあるという。早速、佐賀県へと向かう松軽豊。最初に入ったドライブインで、サザエさん全45巻とよりぬきサザエさん全13巻を発見する松軽。感極まった松軽は、途中で偶然入手したダイナマイトで、ドライブインごと爆破して、サザエの汚メガのつぼ焼きを、時々喉に詰まらせながら、食べるのであった。

 

前略  ◯◯様

取り急ぎリライトしましたので、送信致します。内容、ご確認願います(かなり猟奇的な内容に仕上がったと自負しております)。

また、下記、何点かお願いがあります。

・撮影の際はスタジオ見学に行かせていただきます。見学の交通費は、そちらで御負担願います。新幹線はグリーン車でお願いします。また、長崎ロケにも同行させていただきます。こちらの移動は航空機(ビジネスクラス)でお願いします。

・タボリさんに会わせて下さい。

著作権は一旦そちらに預ける形となりますが、映画化の際は、再度、交渉させていただきます。

・挿入歌は、トム・ウェイツを起用願います。特に長崎のバーでヤケ酒をあおるシーンでは、トム・トルバーツ・ブルースを。最後のシーンでは、エニウェア・レイ・マイ・ヘッドを必ず使用して下さい。

宜しくお願い申し上げます。

 

ラーメンコミック

ラーメン屋に入る。

注文を終えると、部下がふらりと席をたち、マンガを持って帰ってきた。そのマンガがとにかく汚いのなんの。

「おい、メシ前にそんな汚いマンガ持ってくるなよ。食欲が失せちまうだろ」

「課長、知らないんすか。これ、キングダムですよ」

「あ?」

「キングダムっていうマンガですよ。めちゃくちゃ面白いんですよ」

「だから?」

「このマンガの合戦シーン、書き込みが物凄く迫力あるんですけど、買ったばかりの綺麗なマンガだとなんか今ひとつなんすよね。この、ちょうどラーメン屋に置いてあるぐらいの汚さが、ページに絶妙な効果を生んでるんですよ。いわば、ジーンズのダメージ加工みたいなもんです。この味はね、なかなか出せないですよ。もはや芸術の域です。自分は家にキングダム全巻揃えてるんですけど、改めてここで読み直してるんです。新たな発見があるんですよ」

「それにしても汚いだろ」

「あ、これ実は、煮込んでるんですよ」

「え?」

「ここのラーメン屋のスープ、キングダムでダシとってんすよ」

「うそだろ」

「うそです」

「テメー」

「いいから読んでみて下さいよ」

「え〜、俺、こういう絵柄苦手なんだよな〜」

「課長って、どういうマンガが好きなんすか?」

「俺?タッチとか」

「あ〜」

「なんだその微妙なリアクションは」

「ラーメン屋に似合わないマンガ読んでますね〜。はっきり言ってヌルいというか」

「うるさい。あだち充ディスるんじゃない」

・・・ん?このマンガ、面白いな。次、どうなるんだ?

「どうですか?面白いでしょ」

「うん、まあな」

「この汚れた感じが、またいいでしょ」

「まあ、なんか懐かしい感じはするな」

「これなんて言うか知ってますか」

「なに?」

「汚マンガです」

「お、汚マンガ・・・」

その日から俺は、汚マンガの魅力に取り憑かれてしまった。ページをめくるたびに鼻腔を突き刺す汚マンガの臭いを味わいたいが為に、ラーメン屋に通った。キングダムを読破した後は、北斗の拳ジョジョの奇妙な冒険、はじめの一歩など、汚マンガにふさわしい迫力あるマンガを次々と読破した。試しに美味しんぼを読んでみたが、これはまったく汚マンガにマッチしなかった。

帰宅して、本棚に綺麗に並べられたタッチ全26巻を見る。汚さないように、ページを開きすぎないようにと、神経を使って大切に大切に読んできたタッチ全26巻。これを全部煮込んでやりたい衝動に駆られた。刹那、棚のはしから乱暴にタッチ全26巻を剥ぎ取り、寸胴鍋にぶちこんで、豚骨と鶏ガラを加え、弱火で3日間煮込む。十分に煮込んで汚マンガ化したタッチ7巻を取り出した。やっぱりな。タッチも十分いけるじゃねぇかよ。美味い。

 

 

ハイウェイ16・1

飛ばすぜハイウェイ

爆音で

くるりのロックンロールを流す

前方に

競争馬を積んだトラックが

何台も何台も連なって走ってる

競争馬を積んだトラックと競争

考えただけで心が躍る

アクセルを思いっきり踏み込んで

抜かすぜハイウェイ

抜かす

抜かす

抜かす

次々と抜かす

競争馬を積んだトラックのボディには、ご丁寧に馬の名前が書いてあらあ

自分で実況かける

おおそとからロックンロール、ロックンロールがきた、ロックンロールがきた、アッサリとかわしていく、ものすごい末脚だ。勝ったのはロックンロール、勝ったのはロックンロール、勝ったのは大穴ロックンロールだ。誰がこんなレース展開を予想したでしょうか

くるり

天国のドオアた・た・くううつって歌ってる

あ、今日は、フジロックフェスに

ボブ・ディランが出るな

くるりの曲が、東京に変わる

東京を離れてしばらくたったあの日

故郷の小さなライブハウスでくるりを見た

あの時のドラマー、確かクリストファーだったな

あの夜、くるりは、アンコールの最後に、東京を演奏したんだ

複雑な思いで聴いたな

あれからもう14年がたつ

2004年の4月30日か

あん時、なんであいつ誘わなかったんかな

誘ってたら、運命変えられたかもな

ディランはもう77歳だってよ

 

アゲ

ある朝の食卓。

 

息子「あ〜サマースクールとかウザいわ。なんで夏休みにまで学校行かなきゃなんねーんだよ」

俺「あ〜会社ウザいわ。ガキ共の夏休みが羨ましいわ」

息子&俺「はあ〜」

その時、いつものようにつけっぱなし&選曲任せっぱなしにしていたiTunesから、ふいにあの曲のイントロが流れ出した。

俺「アー!この曲、父ちゃんが若い頃、クラブでかかるとメチャクチャ盛り上がった曲!」

息子「へ〜。静かな落ち着いた曲じゃん。これで本当に盛り上がったの?」

俺「最初は静かな感じで始まるんだよ。そんでね、父ちゃんの知り合いのDJは、徹夜で踊り疲れた朝の5時くらいにこの曲をかけやがるんだよ。このイントロが流れた瞬間、酔っ払ってバーのカウンターに突っ伏してた父ちゃんが、ゾンビのようにムクっと起き上がって、「フゥーーーウーー」っつってこぶしをつき挙げて、ダンスフロアに突入していくんだよ」

息子「へ〜(笑)。・・・でもやっぱこの曲、静かだね」

俺「まあ待てよ。これから盛り上がってくるから。ほら、キタキタキタキタキタ、このドゥム・ドゥム・ドゥム・ドゥムっていう低音のアタック音。たまんね〜」

妻「ていおんってどういう意味だ?」

息子「えっと・・・」

俺「低い音だよ」

息子「今、言おうと思ったのに」

俺「嘘つけ」

妻「じゃあ、低音の反対は?」

息子「おんてい?」

俺「バカ。高音だわ」

息子「でもやっぱりこの曲、静かだよ。いつもの、曲がかかると父ちゃんが狂いまくるやつ、例えばハロハロハローの曲(ニルバーナ:スメルズ・ライク・ティーン・スピリット)とか、 ドゥワで父ちゃんの曲(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン:キリング・イン・ザ・ネーム)とかに比べると、おとなしいよ」

俺「まあな。きっとさ、あの頃の時代とか文化とか美しい思い出込みで、音が俺の脳裏を揺さぶってきてるんだよね」

息子「水着とか、おっぱいとか」

俺「鋭い」

妻「最低」

俺「ほら、お前が好きなDoctor PratsのAra!って曲、ちょうど去年の今頃、フジロックのホワイトステージでみんなで大暴れしながら聴いたよな。目を瞑れば、あの時のパーティーが思い出されるだろ。そういう事だよ」

妻「出た。父さんのBGM理論」

俺「そうよ。だから、色んなシチュエーションで、できるだけ好きな音楽を流しとけ、脳裏に思い出を刻みこんでおけって事だよ」

息子「そうか」

俺「でね、知り合いのDJは、このドゥム・ドゥム・ドゥム・ドゥムの所で、ニューオーダーブルーマンデーのドゥム・ドゥム・ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥ・ドゥってアタック音を繋げてくるんだよ。そんで父ちゃんまたフゥーーー!ってなるんだな」

息子「はあ」

俺「さ、今日も会社ガンバるぞ〜!」

息子「・・・。」

Born Slippy (Nuxx)

Born Slippy (Nuxx)

 

今夜、ハードロックカフェにて

「やっぱり今年は有給出てないみたいだけど、行かないの?フジロック?」

「今年は行きません」

「なんで?去年、子供が無料のうちは行き倒す!って宣言してたじゃん」

「あ〜。撤回します」

「ポリシー無えなぁ」

「先輩に言われたかないですよ」

「ん?俺はポリシーあるよ。彼女を作らない。親と同居を続ける。健康に気をつかわない」

「全部、ダメ人間の終着駅じゃないですか」

「失礼な。苦行だよ、苦行。敢えて苦難の道を行くという覚悟の表れだよ。修行僧が、燃える炎の上を歩くのと一緒だから」

「ヌル〜い炎ですね」

「んで、なんで今年は行かないの?」

「金曜日のメンツです。やっぱりメンツなんすよ。フジロックの雰囲気を楽しみたいとか、嘘でした。行くと、なんだかんだでストレスが溜まるんですよ。そのストレスを、好きなアーティストのライブでぶっ飛ばし、浄化する。俺のフェスに対する姿勢って、そんな感覚だったんですよ」

「それ、なんかの流れに似てるね。あ!サウナ!」

「まさに!サウナですわ」

「じゃあ、今年は家族でサウナに行けば解決だね」

「え?」

「サウナルームで有線のチャンネル選択できる店、知ってるよ。あれで、ロック流せばいいじゃん」

「いや、そういうわけでは・・・」

「あ!エスニック系の料理出してるサウナも知ってるぞ。フェス飯みたいなやつ」

「いや、別に食いたくないです」

「そういえば俺さあ、サウナに行くと、なぜか唐揚げ食いたくなるんだよね〜」

「あ、自分もです」

「あ、ハイネケン出してるサウナもあるぞ」

「いや、ハイネケン飲みに行くわけじゃないですから」

「良かったなあ。今年の夏、家族で行く所、見っかったな」

「なんで、俺のフェスはサウナだったみたいな流れになってるんすか!」

「あ!ゼア・イズ・ア・ライト・ザット・ネバー・ゴーズ・アウトかかった!」

「っていつの間にリクエストしてたんすか!・・・来るんですよね」

「そう。来るんだよ。確か土曜日のグリーンステージだよな。・・・一緒に行っちゃう?」

「先輩とすか?2人でですか?」

「うん。苗場でジョニー・マーが奏でるアルペジオ、聴きたくないか」

「・・・やっぱ、サウナにしますわ」

「サウナ行くか」