クリスマスの夜

嬉しい事に、リクエストがありまして。マイ・クリスマス・ソング・ベスト3を発表します!

 不動の1位は、この曲。

 THE POGUES : Fairytale Of New York

日本ではあまり知られてないけれど、イギリスでは一番人気のクリスマスソングです。この「昭和枯れすすき」みたいな歌詞の曲を、パブで酔っ払ってみんなで合唱するなんて、色んな意味で素敵だと思いませんか。僕は、日本でもこのポーグスの曲をクリスマスの定番曲とする為、細々と普及活動に努めています(シェーンに印税とか入るのかな?入ってるといいな)。まずは家族からという事で、うちの家族もだいぶ洗脳されてきたと思う。

 

ナンバー2の発表の前に、我が若き日を振り返ると、女性とお付き合いする期間ってのが短命で終わる事が多く、肝心のクリスマスに彼女がいないってケースがほとんどでした。仕方なくバイトの穴埋め役を買って出たり、意味も無くめかしこんで土曜日の夜の恋人を探しに街に出掛けたり、そんな自分を妄想してベッドでエビ型に寝てたりとか、とにかく孤独なクリスマスを過ごしていたな〜。ああ、ハッキリ言って辛かったよ。そういうの気にしない男になりたいよな。で、そんな時に聴いていたのは、この曲だ。

 BEN FOLDS FIVE : BRICK

 

美しいメロディー。まるで窓の外に雪が降り積もる時のBGMの如く弾かれる優しいピアノの調べ。そこにベンの切ないボーカルが乗るこの曲。ずっと「クリスマスの翌日に女の子にフラれる歌」だと思いこんでいました。ベッドでエビになる時に相応しい曲。

だけど本当は、「クリスマスの翌日に、「やっぱこいつのこと好きじゃないわ」と気づいた彼女を中絶させる費用を稼ぐ為、クリスマスプレゼントを売って金を作りに行く歌」という、ちーとも共感できない鬼畜極まりない最低の内容の歌詞で、ベンに対する怒りで震えた。おい!ベン!金を返せ!

これが所謂、「華氏65度の冬」ってやつですな〜。でも、なんでかんで好きな曲です。 

 

そして第3位は、これ。

VINCE GUARALDI TRIO:もみの木

 

スヌーピーのメリークリスマス

スヌーピーのメリークリスマス

  • アーティスト: ヴィンス・ガラルディ,フレッド・マーシャル,エマニュエル・クライン,チャック・ベネット,モンティ・バドウィッグ,ジョン・グレイ,トム・ハレル,ジェリー・グラネリ,スウォード・マッケイン,コリン・ベイリー,マイク・クラーク
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2012/11/07
  • メディア: CD
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最後は、お洒落にね。長く生きていれば、素敵なクリスマスってやつも経験するものです。本当は照れ臭くて、そういうのあんまり好きじゃないんだけどね。

 

土曜日の夜

日曜日の夜に、土曜日の夜に聴きたくなる音楽を聴こうかな。聴こうよ。

 

土曜日の夜

土曜日の夜

 

 

イントロの、都会の雑踏の中に響く「ファー」っていう車のクラクションの音を聴いただけで、物凄く切ない気持ちになっちゃうんです。あのクラクションの音、もしかしたら僕が人生で耳にした音の中で一番切ない音かもしれない。独りぼっちの土曜日の夜に、ロックグラスに普段飲まないバーボンをちょっとだけ注いで、その上にポトンと落とした丸く削った氷塊を、指のマドラーでかき回しながら、そんなことしてる自分を夢想しながら、この歌を何回も聴いていた。正直言って俺には、トム・ウェイツの如く土曜日の夜の恋人を探しに、めかしこんで土曜日の夜の街に繰り出す勇気も気力も無かったよ。氷を削って、ビーフジャーキーを炙って、酒をグラスに注ぐ気力すら無かったよ。ただ、部屋で一人でベッドでエビ型になってダウンしていただけだ。

この曲が入ってるアルバム、名盤だよね。でも、アルバムジャケットが本当に残念な感じの絵画で、なんであのジャケットなんだろうなって、いつも思ってた。いやいや、あれはあれで味があっていいジャケじゃないかって、言い聞かせてた時期もあった。でも、あれでスモールチェンジのジャケットだったら、たちまち大大大名盤にアップグレードされちまう事だろう。アルバムの後ろ側に載ってる写真でもいい。なんでこっちがジャケじゃないんだろうか。あの絵、おそらく土曜日の夜の歌詞をイメージ化したものなんだろうけど、歌詞に出てくる「微笑を浮かべてこっちをみてる水商売の女」があの小太りで憎らしい顔をしたババアというのは、いかがなもんだろう。俺の中では「微笑を浮かべてこっちをみてる水商売の女」は、フェイ・ダナウェイじゃないといけない。強制的にあのババアを連想させてきやがるのは、本当に迷惑なのでやめてほしい。

フランス映画が好きな女の子、ジャズが好きな女の子、ピアノが好きな女の子、酒が好きな女の子、朝日に目を細める女の子、コーヒーを上手に淹れる女の子、シオンが好きな女の子(もっともそんな奴はいなかったが)・・・ちょっとでもトム・ウェイツ好きそうな要素を持った女の子と出会った時、手当たり次第にアルバム「土曜日の夜」を貸していた時期がある。でもやっぱり、あのジャケットに拒否反応を示し、明らかに聴かないで返してきた女の子、多かったな。多分、あのババアのせいだよね。

 

続・私立デフジャム高校ヒップホップ部

クラスの男子、みな最低だし

おいわたしの事、悪く言うのまるで仕事

どうせデブブス暗いよ、私は心でクライよ

もう嫌ヨこんな人生、そろそろしたいヨ転生

 「あんた、結構、ラップの才能あるやん」

え?!しまった!声に出してもうてた!振り向くと、そこにはシャアザク!・・・じゃない、大阪から転校してきた玉井君が立っていた。玉井君は、とにかく赤い。いつも全身赤い服装で目立っていた。さらに登校初日には、首にゴールドのチェーンをジャラジャラぶら下げていた。もっともそのチェーンは、直ぐに体育教師に没収されていたが。

「あんた、よお、いじめられてるな」

「え?」

「いつも見てるで」

「はあ」

「あんた、破壊力抜群なブスやもんな」

「はあ?」

「ほんでまたデブやし、暗いし、いいとこ何も無いなあ」

「・・・。」

「でも、さっきのラップは、かなりイけてたで」

「ラップ?」

「よかったら、これ見てみ」

玉井君が赤いジャージのポケットから取り出したのはVHSのビデオテープで、タイトルの所には汚い字で「よお!MTVラップ。ソルトンペッパーの巻」となぐり書きしてあった。

 

家に帰って見て、驚いた。黒人の女性3人組が、早口言葉で歌って踊って躍動している姿。これが、ラップか・・・。

 

翌日。

「どやった?」

「・・・すごくカッコよかった。」

「せやろ。こいつらブスでデブだけど、もの凄くイキイキして躍動してるやろ。あんたもこうならな、アカン」

「・・・うん」

「とりあえず、今度開かれる学園祭のバンドコンテスト、あれに出たらええ」

「え?玉井君と?」

「(笑)。いや俺はな、いまLL COOLJのアイニージュラブって曲、めちゃめちゃ練習してんねん。だからあんたとは出られへん。でもな、今、アイニージュラブ練習してるおかげで、俺、めちゃめちゃ優しい気持ちモードになってんねん。せやから、ちょうどいいブス、もう二匹見つけといたから、そいつらとトリオ組んで出たらええ」

玉井君が連れてきたのは、木村さんと笹本さんという気怠そうなデブ2人で、どう見ても高校生には見えなかった。「 ジャージ着れば大丈夫や」と、玉井君は言った。

その日から私達は、ソルトンペッパーのPUSH ITを猛練習した。バックトラックは、玉井君の大阪の知り合いのDJエトゥーって人が特別に作ってくれた。ラップの部分は、私がオリジナルの日本語ラップを書いた。

「俺な、今、ごっつい優しい気持ちモードやねん」と、ダンスの振り付けは玉井君が考えてくれた。それは、お股の前で手をヒラヒラさせて高速で腰を前後に振りまくる振り付けだった。「ソルトンペッパーみたいやで」と言われ、一生懸命練習した。

 

いよいよ、ステージ当日を迎えた。バックステージで、集中する為に目を閉じると、今までの人生の辛い事ばかりが浮かんできた。いい事なんか何一つ無かった。今日で、私の人生は変わる。今日から、私は生まれ変わるんだ!

 

「それでは次のステージは、塩コショーwith豚のしょうが焼きで、PUSH ITです!」司会のガナリに合わせて、私達はステージに勢いよく飛び出した。会場がザワザワした。

あ〜、プッシー、プッシー!プッシー・グ〜!

玉井君の振り付けで歌い出す。

と、会場の奥から米国帰りの堅物英語教師ミヤザワが、両手でバッテンを作りながら鬼の形相で客席に乱入してきた。

 

そこからどうなったかは、記憶が飛んでいてあまり覚えていない。ただ、次の日から私を嘲笑するアダ名群に新たに「プッシー」という単語が加えられた。

 

 

 

私立デフジャム高校ヒップホップ部

よお、よお、よお。ラジオから流れてきたランDMCのウォークジスウェイには、まったく度肝を抜かれたよ。とにかく、今まで生きててこんなにカッコイイ音楽は聞いた事なかったからよお。ラップっつうの?ラップっつったら俺、ワム・ラップ一択だったからね。あ?サランラップって言うと思った?

で、ウォークジスウェイのイントロの、「チーたったラッタッタ、チーたったズビズビズビズビ」の「ズビズビズビズビ」の所、どうやって音出してんだ!って大騒ぎになったよね。何よ?あのノイズっぽいかっこいい音は。

で、すぐレンタルレコード屋に借りに行ったのよ。びっくりしたよ。ランDMCって黒人なのね。ラップも歌も両方うめ〜な〜って。そんで、レコードジャケットがさあ、ガタイのデカイ黒人の三人組が写ってて、真ん中のメガネの人が「行くな、行くな」って他の2人を制止してる写真なんだよね。まるで両脇の2人が誰かぶん殴りに行こうとしてるのを、真ん中のマジメなメガネの人が止めてる感じ。だけど、足元見ると全員アディダスの靴紐外して履いてんだよね。何これ?カッコいいな!っつって、俺もたまたま持ってたスタンスミスの靴紐速攻外したからね。でも、履きづらくて仕方ねぇんだよ。ちょっと歩くと脱げちまう。でもランDMCもやってるからなっつって、脱げないようにゆっくりゆっくり我慢して歩いてるよ。

んで、大阪から転校してきた玉井君が、赤いジャージにカンガルーのロゴマークが入った赤い帽子被って昔のデカいラジカセ肩で担いで歩いてたから、「玉井君、何よ、その格好は?」って聞いたら、「L.L.COOL Jだよ」っつうから、何それ?ってなって、今一番イケてるラッパーだって。俺が、「イケてるラッパーってランDMCでしょ?」って言ったら、とりあえずこれ聞けっつって、持ってたデカいラジカセでロック・ザ・ベルって曲を聞かせてくれて、これがカッコよくてぶっ飛んだね。で、「このランDMCのウォークジスエイのズビズビズビズビと同じ、キュワキュワッって音って何なの?」って聞いたら、玉井君はヘラヘラ笑って「スクラッチやね」と言った。んで、「明日のベストヒットUSAでランDMCのビデオ流れるから、見〜や。最初にスクラッチの映像出てくるから見逃したらアカンで」って教えてくれた。

土曜の夜はオヤジがプロ野球ニュースを見るから、VHSの3倍モードでタイマー予約録画しておいたベストヒットUSAを、翌日、いいとも特大号の嵐山光三郎の枯れたメッセージが終わった後に、ドキドキしながらチェックしたよ。再生して、また驚いたね。ランDMCのメンバーに白人いるのね。このハスキーな声、この人が歌ってたのか。ヒョロヒョロに細くてカッコいいな。玉井君が教えてくれたスクラッチってやつが、レコードを擦って音を出してるって事実よりも、ランDMCのボーカルとギターの人がやたらカッコイイ事に衝撃を受けたんだよ。

 次の日、玉井君に話したら、あれはエアロスミスっていうバンドのオッサン達で、ランDMCのメンバーではない事、ヒップホップのアーティストはサンプリングっつって昔のレコードから音源をかっぱらってるんやでって教えてくれた。玉井君、色々知っててスゲーな〜。俺、FMファンって雑誌の鮎川誠さんのコラムからしか洋楽の情報取れてないからね。

玉井君はヘラヘラ笑いながら、「ヒップホップに興味があるならこれ見てや」って、タイトルの所に「ワイルドスタイル」って汚い字でなぐり書きしてあるVHSを貸してくれた。

 家に帰って再生して、ぶっ飛んだ。荒れた画面の中、金髪のオネーサンと馬がXXXXしている映像が飛び込んできたからね。そっと停止ボタンを押してテープを巻き戻した。テープが巻き戻ってキュルキュルいってる音がスクラッチの音みたいで、この音こそが諸行無常の響きっつうのかな・・・ってシミジミしちゃったよね。んで、エアロスミスのレコードでも借りに行こうかと外に出ようとしたら、スニーカーが思ったより足ごたえがなくて、前につんのめりに転んじゃったよね。やっぱり紐が無いスニーカーは歩きづらいわ。よお、よお、よお。

 

 

 

 

Rock the Bells

Rock the Bells

  • LLクールJ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250



 

 

バーにたかるハエ

夜、久しぶりに酒場へと繰り出す。酒場のネオンサインが好きだ。それが古いネオンなら尚更いい。ピンクや青に妖しく光るネオンに引き寄せられて、まるで街灯の光に飛び込む小虫のようにフラフラとストリートを行ったり来たり。

ん?なんか映画のオープニングみたいじゃないか。俺は映画監督になった気分で、このシーンに合う音楽を考える。あ、あの曲がいいな!なんて曲だったかな・・・?えっと、確か・・・ブッカーT&MG'S!ヒップハガーだ。ダルい響きのシンセに合わせ、カメラは観客目線で飲み屋を物色する。

 

と、興奮気味にここまで考えて、それが、ミッキー・ローク主演のバーフライのオープニングと全く同じだという事に気付く。だが、バーフライの内容は、すっかり忘れてしまっている。確か、原作がチャールズ・ブコウスキーで、ブコウスキーが脚本も書いてる。おまけにブコウスキー本人も出てるときた。もう、ブコウスキーの名前しか残らねえ。

 

誰が言ったか知らないが、「全ての音は鳴らされてしまった」ってセリフ。もしかしたら、全てのシーンも、もう撮られちまっているのかもしれないな。

 

検索したら、出てきた。いい時代になったな。

 

で、エンディングも見てくれ。物語が終わった後も、再びバーを探して彷徨い歩くのさ。永遠にね。