短編習作

店主が厨房の奥で怒ってる食堂

店主が厨房の奥でいつも怒ってる食堂がある。同僚のTは、いつも僕をそこに連れていく。その店は、奥に調理人兼店主と思われる主人がいて、レジに主人の奥さんと思われるオバさん、ホール係にさえないバイト君といったスリーピース構成で回している。 味は美…

レッチリのTシャツ

世間に溢れすぎだろ、レッチリのTシャツ。どう見ても、あんたレッチリ知らないだろ?って奴まで着てる。これほど着てる奴が多いと、その意味が違ってくるよな。まるで「辛いモノ好き同好会」のTシャツみたいな事になっとるぞ、レッチリのTシャツ。 スーパー…

アリ

「アリ婆と48人の娘達」 亜理は近所でも有名な働き者だった。 毎日毎日、休むことなく馬車馬のごとく働いた。人々はいつしか彼女の働く姿を評して「人間発電所」と名づけた。 亜理は、巡業で街にやってきた力士兼木こりの大作と恋に落ち、結婚した。 それか…

ケムリガクビシメル・改

−ケムリガクビシメル・改− 朝7:30の"ジュディのコーヒーショップ"のカウンター。 俺の朝はここのベコーンエッグ&マッシュポテトと一服のタバコからスタートする。 最近はどこのレストランも全席禁煙が当たり前。この辺で大手を振って堂々とタバコが吸える…

ケムリガクビシメル

−ケムリガクビシメル− 朝7:30のJR水戸駅3番ホーム突端近くの喫煙コーナー。 俺の朝はここからスタートする。気合の一服ってやつだ。 最近は禁煙ブームだかなんだか知らないけれど、俺の会社もついにオフィス内全面禁煙になっちまいやがった。 カミさんまで…

アマイ・ナ2

それから、僕の美奈さんへのスイーツ餌付け攻撃は1年間続いた。 今や、憧れの美奈さんはかつての美人受付嬢の面影は跡形もなく消えうせ、 ブクブクと醜悪に太った一匹のブタと化していた。 それでもよかった。美しく完璧なるモノを俺の手でジワジワと貶めて…

アマイ・ナ

会社に来る時はいつも珍しいスイーツを手土産に持ってくる取引先の近藤さん。 会社の女の子達にとってもウケがいい。全く、ヤなやつだぜ。 いや、まてよ、これだ!と、僕は気付いた。 早速、憧れの受付嬢、美奈さんを呼び出した。 美奈さんはその天性のキレ…

「ハゴロモサクコロ」

「見て、見て、ハゴロモ!」 色鮮やかな桜の花で飾られた国立自然公園を歩いていたら、 突然カミさんがすっとんきょうな声をあげた。 "ハゴロモ"ってあの天女が着てるやつか? 「そう、あのハゴロモ!さっきあそこを歩いてた女の人がハゴロモ着てた!」 確か…

「ノゾミ・ヒカリ・コダマ」

私の名前はコダマ。3姉妹の真ん中。 姉の名前はヒカリ。妹の名前はノゾミ。 鉄道マニアの父がつけた。 ノゾミは作る予定がなかったけれど、しょうがないからがんばったって高齢出産の母が言ってた。 コダマなんてヤな名前よね。 コダマはいつも追い抜かれる…

ユメユメ

株式会社ユメユメから毎月送られてくる請求書。 経理の派遣スタッフの僕には、ユメユメがどんな会社かわからないけれど、 請求書の封筒にはいつもきれいな記念切手が貼ってある。 1月は富士山、2月はキャデラック、3月はエルビス・プレスリー、4月は武道館・…

トラビス

あの頃、僕の夢は舞台の演出家で、君の夢は女優だった。 2人でタクシーに乗るときは、きまって即興で演技をすることが2人の間のルールだったね。 ある時は結婚前のカップルだったり、売れない芸能人とマネージャーだったり、里帰りした兄妹だったり・・・…

同・窓・会

+同窓会+ある日、同窓会のおしらせハガキが届いた。 高校時代の仲良し4人組。3年の時、学園祭でバンドを組んだんだよね。 正直、会いたくないなと思った。 俺はうだつのあがらないサラリーマン。学生時代は、「俺は誰の支配下にも入らない」なんてデカい事…

カップ

コーヒーカップを集めだしたのはいつ頃からだろう。 彼女に連れられていった陶器市。 あんな所に行くと、 ”誰かに突然呼び止められて振り向いたら背中にしょったリュックサックで飾ってあるグラスを根こそぎガラガラガッシャーン” っていう恐怖の光景がフラ…

P.T.A.はダンステリア

― P.T.A.はダンステリア ―「もう、あそこのお母さんったら自分勝手で最悪よね」 PTAの会合帰りに決まって立ち寄るファミリーレストラン。今日も毒舌の吉田さんのお母さんが口火を切った。 「そうねぇ」 おとなしい松野君のお母さんと私はいつも聞き役だ。 「…

ジョイン

電車に揺られ、職場に向かう。俺の職場はまるで戦場だ。 忘れもしない2003年。あの忌まわしき「ホチキス小学校乱射事件」がおきてからというもの、 ホチキス規制1362号が発令。街の文房具屋全てからホチキスが姿を消した。 ホチキスを扱うには難しい国家…

ホラ

下の2階に引っ越してきた夫婦、ケンカばっかりしてる。 旦那の野太い怒鳴り声で始まり、奥さんのソプラノ叫び声に続き、赤ちゃんの爆発する泣き声の3重奏。 毎晩毎晩決まって23時だよ。うるさくてねむれやしない。 カミさんが、「あなた、いい加減に注意して…

誰もいないハイウェイ。車をとばしていたら、 助手席に小人がひょっこり現れた。 びっくりしてハイウェイのコンクリートの壁に車をガーッとこすっちまうところだったぜ。 小人は、「口を大きくお開けなさい」と言った。 口を開けて横目で小人を見やると、 小…

朝だ。いつも以上にすっきりと目が覚めた。 ベットから勢いよく立ちあがり、手を頭上で組んでひっくり返しながら、ウーンと伸びをした。 と、手が離れない。手が離れない、手が離れない。 引き離そうと左右に引っ張れば引っ張るほど、手はぴったりとくっつい…