ジョイン

電車に揺られ、職場に向かう。俺の職場はまるで戦場だ。
忘れもしない2003年。あの忌まわしき「ホチキス小学校乱射事件」がおきてからというもの、
ホチキス規制1362号が発令。街の文房具屋全てからホチキスが姿を消した。
ホチキスを扱うには難しい国家試験にパスしなくてはならないし、製造中止されたホチキスは入手困難になっている。
闇のルートで売買される違法ホチキスは、常に新聞紙上を賑わす深刻な社会問題となった。
俺はプロのホチキス屋。企業より高額な契約金で雇われている。
俺の仕事は、書類をホチキスで留めることだ。
俺のホチキスは、コクヨスーパーマグナム445。この界隈じゃぁ、もっともデカいホチキスだ。
こいつは、分厚いダンボールの束も一発でブチ抜く危険なホチキスだ。試してみるかい?
「おはようございます」 いつものようにフレックスタイムやや遅めで出勤すると、俺のデスクの上にはすでにたくさんの書類が積み上げられている。
今日は月曜日か。いつもより書類の量が多いようだ。しょうがねぇ、高等テクニックの2丁ホチキスで片付けるとするか。
ふぅ。ホチキス後のブラック・コーヒーは、俺のかわいた心まで癒してくれる。
俺の親父もかつてはホチキス屋だった。親父は、全日本ホチキス選手権決勝戦で35枚の書類を留めるのに失敗。
あの日以来、親父は植物人間となっている。俺はその時の優勝者、ジョニー針金に復讐する為に、仕事以外でも日々過酷なトレーニングを積んでいるのだ。
おっと、ホチキスの弾がきれちまったようだ。
弾をこめてる時はいつも、過去の色んな事が思い返されセンチメンタルな気分になる。
その思いを振り切って、俺は今日も書類を留めるのだ。