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「ハゴロモサクコロ」

「見て、見て、ハゴロモ!」
色鮮やかな桜の花で飾られた国立自然公園を歩いていたら、
突然カミさんがすっとんきょうな声をあげた。
"ハゴロモ"ってあの天女が着てるやつか?
「そう、あのハゴロモ!さっきあそこを歩いてた女の人がハゴロモ着てた!」
確かに、遠くの橋のむこうを歩いていたカップルの女性の方は、
なにやら白くて長い布を目障りなくらいヒラヒラさせていたように見えた。
あれ、ストールだよ。
「ううん、ストールはあんなにヒラヒラしてない。あれは間違いなくハゴロモハゴロモなんて着てるセンス、信じられない!」
カミさんはやけに興奮して、今時ハゴロモなんてまとってるセンス最悪女の顔がどうしても見たいと主張した。
うーん、もしかしたら本当の天女かもしれないね、ハハハ。
俺達はカップルの後を追った。
もしかしたらハゴロモ・プレイなんていう新手の楽しみ方なのかもよ。まさかー。
角を曲がるとすぐにトイレがあり、カップルの男の方が近くのベンチで待っていた。
どうやらハゴロモ女はトイレに入っているようだ。
俺達は外でハゴロモ女が出てくるのを待つことにした。
しかし、女は一向に出てくる気配がない。
しびれを切らしたカミさんがトイレの中にむかった。
しょうがないので近くのベンチに座って一服することにした。
しかし、カミさんの好奇心にも困ったものだ。
ペアルックのカップルだとか、ダサいプリントの入ったTシャツの男なんかを発見すると、喜びいさんで携帯カメラを撮りたがる。
それからしばらく待ったが、女もカミさんも出てこない。ちょっと様子がおかしいぞ。
男の方も、心配そうに時折トイレの方を見ている。
2本目のタバコをコンバースの底で潰して消した時、突然トイレから閃光が走った。
なんだ!俺は驚いてカミさんのいる女子トイレに駆け込んだ。
カミさんは鏡を見て化粧をなおしていた。
「あんた、女子トイレになんか入ってきてどうしたの?」
さっき何かが爆発したような凄まじい光がここから出てきたからさ。ハゴロモの女は?
「え?何言ってるの?何?ハゴロモ女って?」
え?さっきの白いヒラヒラの・・・
外に出ると、さっきまでいた男の姿は影も形も無く消えていた。
そして隣にいるはずのカミさんも消えた。
桜の花びらだけがのん気にヒラヒラ舞っていた。
春は色んなことがおこる季節だ。こんなことは春のせいにして早く忘れてしまおう。
桜がキレイ。