タバコについてのエッセー#1

タバコは10年前にやめた。
かつて吸っていた理由は、ジャン・ポール・ベルモンドデニス・ホッパー
インディアン・ランナー」のビゴー・モーテンセン(まさか10年後にゴースト連中引き連れての特攻シーンで再会するとはね・・・表記も今はヴィゴーか・・・)の影響だ。
好んで吸っていた銘柄は、マルボロ、クール、ウィンストン、ハイライト・・・。
それらの銘柄に共通すること、それは"ソフトケース"であること。俺は断然ソフトケース派だった。
ハコで吸ってるヤツはダサイぜ、なんてBOXヤローは完全に見下してた。
ライダースの皮ジャケットの胸ポケからソフトケースを取り出して、
ぐにゃぐにゃにひん曲がったタバコに火をつける・・・これよ。
直線的で角ばったシャープなイメージは、タバコには似合わない。
だって火や、煙や、空気や、心や、人生は、いつだって揺らめいてるだろ?
そんな視覚的なイメージにこだわった。味だとかタールなんて本当はどうだってよかった。
10年後・・・。まさか営業でタバコのBOXの紙を作ってる会社に行くことになるとはね・・・。
この禁煙ブームだってのに、ここの連中はバカバカ吸いまくってやがる。
担当者は腕にはめたブルガリの時計をジャラジャラいわせながら、
「やっぱり今、ハードケースが主流でしょ。なんてったってファッショナブルだし。女性にウケがいいしね」と主張して、3本目のラッキーストライクに火をつけた。
僕は心の中でその主張を全否定しながらも、
「時代はハード・ボイルドっすからね、ソフトな価値観じゃケムにまかれてしまいますよ(笑)」とオトナの対応。
その時、唇がほんのちょっとだけさみしそうに震えたのを感じた。
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