百円愛

百円玉が好きだ。
シルバーに輝くそのシンプルなフォルムと
指の間から滑らないように…という優しい配慮のもと円周に刻み込まれたギザギザ。
まさに硬貨の王様だ。
世間には500円玉なんてヤツもいるようだが、あいつははっきりいって作りこみ過ぎてイヤミな硬貨だよ。
モビルスーツでいえば、ジオングな。ジオングってジュディ・オングみたいな名前でダメだよな。
ああ、俺は百円をたまらなく愛している。
駅の券売機でキップを買うときは、お釣りをなんとか百円にしようといつもがんばる。
たまにバカな券売機が俺の必死の努力も虚しく10円玉×10枚で払い出ししやがる。
あのときの「ジャラ」っていう音、あれこそが平家物語でいうところの「諸行無常の響き」ってヤツなんだろう。
小学生の頃は「命の百円」と称して、愛用の広島カープの赤い帽子の中に作った秘密のポケットに、常に100円玉を一枚忍ばせていた。
もしもカツあげにあった時、もしも空腹に襲われた時、もしも銃で頭部を撃たれた時、
この百円玉が俺の命を救うと信じて疑わなかった。だからあの頃俺は、全身全霊をこめて遊びに没頭していられたのだ。
今日、偶然にもカープの帽子から命の百円が出てきたので、ひょいとポケットにいれて街に出かけた。