5時のヒーロー

長い事心の片隅にひっかかったままだったあの仕事をヒョイと終らせると、
ボクは車に飛び乗った。
今日はポール・ウェラーのライブだ。
開演時間が夕方5時からなんて、まさに「5時のヒーロー」だよな。
ハンドルを握り駅へと向かう。
信号待ちで、ベスパに乗った少年が隣につけた。
「おい、こんな所で何やってるんだ!今日はポール・ウェラーのライブだぜ」
「え?ポール・ウェラって誰ですか?」
「なんだよ、ポール・ウェラーも知らないのにそんなにミラーのたくさんついた改造ベスパに乗ってるのかよ。よし、俺についてこい」
途中、ターゲット・マークのTシャツを着た少年とすれ違う。
「おい、こんな所で何やってるんだ!今日はポール・ウェラーのライブだぜ」
「え?ポル・ウェラーって誰ですか?」
「なんだよ、ポール・ウェラーも知らないのにそんなターゲットマークのTシャツ着てリーバイスを濡らしてはいてるのかよ。よし、俺についてこい」
ゆりかもめに乗ると、ステンカラーコートを着た少年にでくわす。
「おい、こんな所で何やってるんだ!今日はポール・ウェラーのライブだぜ」
「え?ポールー・ウェーラーって誰ですか?」
「なんだよ、ポール・ウェラーも知らないのにステンカラーコートにアーガイルのソックスはいてるのかよ。よし、俺についてこい」
そんな調子で、もの凄い数の少年達を引き連れてボクはゼップ東京をめざして歩いた。
その数はいつのまにか何百人にも膨れ上がっている。
よーし、みんな道路いっぱいに広がれ。そして思いっきり声を響かせ歌うんだ。
ウィーアーモッズ、ウィーアーモッズ、ウィーアーウィーアーウィーアーモッズ
そして5時から15分が過ぎる頃、ボクらはイヤなこと全て忘れて、叫び声をあげ踊った。
ボクらはこの日を絶対に忘れないだろう。