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サイン

相当前にも書いたが、僕の名前はちょっと変わった名前である。苗字も全国的にはあまり多い苗字では無いので、同姓同名の方に出会う事って無い。…いや、一度だけあったんだよな。

かつて、ホテルで働いていた経験がある。その時に僕と全く同じ名前の方から予約が入った事があった。最初に電話を受けた同僚の女の子は、「また〜、何ふざけて電話してきてるんすか〜」と言ってしまい、電話間に非常に微妙すぎるほど微妙な空気が流れたと、その時の恐怖体験を回想してくれた。「しかし、どんな人なんだろうね〜。ほら、占いとか一緒の結果になるわけじゃんね〜」「いや、私が失礼な電話対応しちゃったんで、もう来ませんよ」と、その時はそれで終わった。

数日が過ぎ、出勤すると、フロントの女の子がニヤっと笑って人差し指を立てるサインを出した。どうも、また奴から予約の電話が入ったという。今度はフロント子は失礼なく対応。そして、今日のチェックイン担当は、俺だ。いよいよ奴との対面が果たせる。フロントに緊張が走る。どんな人なんだろう。品のいい紳士かな?ポール・ウェラーかな?スティングかな?ブライアン・フェリーかな?

待つ事数時間、ついに奴は現れた。「○○  ○です」俺と同じ名前が告げられる・・・そこには、非常に厳しい顔をした無愛想なオッサンが立っていた。どう見ても”人生楽しんで無い感じ”の普通の男だ。チェックインのサインをさせながら、チラリと時計や服や靴など男の装飾品をチェックする。残念ながら普通だ。いや普通以下だ。この男からは何のこだわりも感じない。いや、何のこだわりも無い所がこの男のこだわりなのかもしれない。と、なんとかプラスに考えようとしている俺。眼前には、相も変わらず笑顔無く、ただただ厳しい顔をした男。挙句に前回宿泊したときのクレームめいた事もブツブツ言ってきやがった。反射的に日々訓練された謝罪を遂行する俺。チェックインの手続きを終え、部屋へのエレベーターに向かう男の背中を見つめながら、なんだか無性に悲しくなってしまう俺。どうして悲しくなるんだよ!たかが名前が一緒なだけのオッサンじゃないかよ。

 

・・・今思えばあれ、何年か後の俺だったんじゃないか。今はもうあいつに近い年齢になっている。急いで鏡を見に洗面所に走った。そこに映っていたのは・・・

いや、違う。あいつじゃない。あいつじゃないよ!あんなクソジジイであってたまるかよ!

じゃあ、パラレル・ワールド上の何年か後の俺だったんじゃないか。とにかく、あれってなんらかの重大なサインだったんじゃないか。あの時は、深く考えずに見逃しちまったけれどさ。

実は、人生には色々なサインが出ている気がする。死んだはずのアイツみたいなヤツを街で見かけて、無性にアイツに会いたくなった。これもきっとなんかのサインなんだろうな。

 

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