シートベルト

シートベルトが嫌いだ。

一人きりのショートドライブだと、たまに締めない時がある事をここで敢えて告白しよう。そんな怠惰な僕に、いつも車が語りかける。

「ベルト締めて!ベルト締めて!」(実際には、ピー、ピーって音ね)

「うるさいなあ、黙れ」

「締めないと死ぬよ!締めないと死ぬよ!」(実際には、ピー、ピーって音ね)

「昔はみんな締めてなかったんだぜ」

「昔の事は知りません」(実際には、ピー、ピーって音ね)

「そういえば、デビット・クローネンバーグのクラッシュって映画の主人公、シートベルトしてたかな?」

「残念ながら、映画を見た事が無いのです」(実際には、ピー、ピーって音ね)

「へえ。昔はドライブ・イン・シアターとか、あったんだぜ」

「なんですか、それ?」(実際には、ピー、ピーって音ね)

「そこで、デカいアメ車でクリスティーンとか見ると相当盛り上がったんだろうな」

「監督、ジョン・カーペンターですね」(実際には、ピー、ピーって音ね)

「知ってんのかい!」

「…その映画、知ってます」(実際には、ピー、ピーって音ね)

「なんだか怖いな。ベルト締めるわ」

「あっ!」(実際には、ピッって音ね)

 今日も車は僕に語りかける。