いい加減、庭の雑草がひどい事になってきたので、妻がネットで草刈り機を購入した。
てっきりチェーンソーみたいな本格的なアレが来るのを想像していたのだが、届いた草刈り機は非常にコンパクトなサイズのものだった。
当然、パワーも弱く、伸びた雑草の上の部分をちょっとだけ刈るぐらいの仕事量だ。
「パワー弱いね」
「そう。ムダ毛処理みたいね」
ムダ毛処理・・・妻が何気なく発したその一言が、なんだかものすごいエロ・パワーでもって僕の胸にズシンと響いて、その日から草刈りを自ら積極的にするようになった。
そんな僕の姿を見て、しきりに不思議がる妻。まあ、よいではないか。理由は語るまい。
iPodで音楽を聴きながら、庭のムダ毛処理をしていると、なんだか雑草達の声が聞こえてきた。
「あー、せっかく光合成してやってるってのに、なんで人間は俺たちを抜いちゃうかな〜?」
「そうだ、そうだ。俺たちが出す酸素が無くなったら、人間なんか死んじまうんだぞ」
「あー、芝はいいよな〜。芝はなんか優遇されてるよな」
「俺も芝になりてーよ」
「俺なんて、ずっとずっと芝になりたいって思ってたら、見た目、芝みたいになっちまったよ」
「確かに!あんた、かなり芝に寄せてきましたな〜」
「そう、パっと見、芝でしょ(笑)」
「しかし、雑草界の王者っていったい誰なんだろうね?やっぱクローバーとかかね?」
「あれでしょ、鈴木啓示さんの家に生えてる雑草でしょ」
「あ〜草魂!あれで、我々雑草のステータスが一段上がりましたからな〜」
「でも鈴木さんも家に生えてる雑草は抜いてるって話だぜ」
「嘘だろ!?踏んでるんじゃないのか?」
「踏んでない。抜いてるらしいよ」
「草魂が泣いてるぜ〜」
「あー、芝になりて〜な〜」
「俺たちの生命力ってものすごいじゃん。サハラ砂漠とかに輸出するってどうかな?」
「いや、俺たちは過酷な状況じゃ生きられないでしょ。だって冬は枯れてるじゃんよ」
「あ、そっか」
「結局ね、ぬるま湯でしか生きられないのよ、俺たち」
「うわーーーー頭を刈られた!何これ?」
「うわーーーー俺もだ。ん?根っこは抜かれてない。刈られたんだ!」
「刈られた・・・・こんな感じ、葉・じ・め・て」
「なんか芝みたいじゃーーん!最高!!」
そんなムダ毛のムダ口を聞きながら、僕は黙々と処理を遂行する。