えびの

息子が、「学校の授業で生き物が必要になった」と私に訴えた。きたきた、待ってたぜ。虫が苦手な長男の時は、妻が私に断りも無く、イージーにダンゴムシで済ませた。私は、妻のその虫チョイスがはっきり言って不本意だった。チョイスする虫のセンスで、その家庭の家柄の質を問われるじゃないか。我が家のチョイスが「ダンゴムシ」とは何ごとだ!と心の中で激昂し、肩を震わせた。次男は、多少、生き物に触れる事に免疫がある。今回は、満を持して私が主導権を握る。

「で、お前は何がいいんだ?トカゲとかいいんじゃないか?」

カナヘビは、先生が嫌がるからな〜。ザリガニにするわ」

息子にサラっと「俺たちがいつも捕まえて遊んでるのはカナヘビだよ」と暗に指摘された事に少しイラつき、車のキーをガチャっと雑に突っ込む。まだ、「近所のスーパーに買い物に行く感覚」で、多種多様な生き物を簡単に調達できる所が、田舎のいい所だ。都会では、こうはいかないだろう。ここでは、それこそミミズだってオケラだってアメンボだっーてーよろしく、みんなみんな簡単に調達できる。都会じゃ、オケラなんか相当なレアものだよな。

 妻の友人からあらかじめ聞いておいたザリガニ生息ポイントへと向かう。そこは、田んぼの用水路のようなドブだ。上から覗き込む。いたいた。やや小ぶりなザリガニが水中でたくさん蠢いているのが、肉眼でもはっきりと捕らえられた。ガキの頃の狩猟手段は、「入水して掴み取り」一択だったが、さすがに悪臭を放つ汚ドブには入水できず、誠に不本意ながら釣りにした。(ガキの頃は、ザリガニをわざわざ釣る奴は、皆から馬鹿にされた。「入って捕った方が早いじゃん!」つって)

スルメのエサをミシン糸にくくりつけ、垂らす。すぐにザリガニが飛びついてくる。奴らの習性で、一度食らいついたら、なかなか放さない。

息子が小さい小エビを釣り上げた。「それは小さい赤ちゃんザリガニだから、リリースしたら?」と言ったが、息子は少し考えて、逃がすのを辞めて小エビをキープした。

 

結局、8匹釣って2匹リリース(片腕のザリガニ2匹)したところで、突然の夕立ちに見舞われ帰宅した。途中、100円ショップで水槽を6個買った。

「なんで水槽をそんなに買うの?」

「こいつらは、夜、喰いあうんだよ。共喰いってやつだ」

「へ〜」

 

帰宅すると、息子が、

「ザリガニって普段何を食べてるの?」と聞いてきた。

「雑食だからなんでも食うけど、まあ、オタマジャクシとか水草とかかな」

「あそこのドブさあ、ザリガニのエサ無かったよね」

「ああ。汚いドブだったから、見事にザリガニしかいなかったな」

「ということは、共喰いするって事?」

「ああ、多分、そうなるな」

「じゃあ、僕が捕まえた小エビちゃんは、あそこにいたら食べられちゃったかもしれないんだね」

「確かに。お前の小エビちゃん、あそこにいたら食われちゃったかもね」

「じゃあ、命救ったんだね。これ、小エビの恩返しあるかも?」

「小エビの恩返し!・・・ある日、少年が小エビの命を救った。翌日、少年の学校に転校生が入ってきた。それはそれは可愛いらしい女の子で、名前は蛯原友里。転校生は、「エビちゃんって呼んで下さい!」とみんなに自己紹介した」

「うんうん。それから?」

エビちゃんは、たまたま空いていた少年の隣の席に座ることになった。席に着くなり少年の方を向き、ニッコリ笑うエビちゃん。そして、エビちゃんは、こう言った」

「何っつったの?」

「私の家、天ぷら屋さんなの。よかったら今日、エビ天食べに来ない?天むすもあるわよ」

「いや、俺、エビ・アレルギーだし。食えないし。何、その恩返し?」

「ああ、そうだったな。お前、ザリガニ掴んだりするのも肌にヤバくないか?」

「あ!ヤバ!もしかして、俺、死ぬ?」

息子は、妻から「エビを食う=死」と洗脳されている。

「ハハハ。それじゃあ、エビの恩返しならぬ、エビの復讐だな」

暗殺者コードEBI、アメリカのドラマにありそうなタイトルではある。