プライドをかけた魂の三曲勝負

前から気になっていたあのお店。店の入り口に、でんとジュークボックスが鎮座しているのが、外からでも伺い知れる。あのジュークボックスの中には、いったいどんなレコード達がセッティングされているのだろうか。そんなことを、店の前を通りすぎる度に想像してワクワクしていた。

今日、タイミングよくその店に入れるチャンスが巡ってきた。お昼のコアタイムを外した時間。見たところ、店内の客はまばらだ。えいや!と思い切って入ってみた。外観から想像していた通りのアメリカンな店内。古びたアメリカの看板や、ゴールドディスクや、アーティストのポスターや、サイン入りギターなんかが店内の至るところに飾られている。想像通り思いっきりベタだけど、悪くない。俺はこういった感じの雰囲気、実は大好きなんだ。

ハンバーガーを注文し、早速、ジュークボックスをチェックする。そこに並んでいる文字は、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、スタイリスティックス、アース・ウインド&ファイアなどの70年代ロックとディスコナンバーが中心だ。やはりメジャーな曲が多いな。ふむふむ、100円で3曲選曲できるシステムか。おそらくこれは・・・店からの挑戦状だな。選曲チャンスを3曲ももらえれば、どんな曲を選ぶかでそいつの歩んできた人生がだいたい分かる。これは、絶対に外せないぞ。PKを蹴る時のサッカー選手の緊張感でもって、頭の中で選曲の組み立てをシミュレーションする。店内には大音量でBGMが流れていた(クイーン)ので、一旦、席に戻る。

と、ここで、店内のBGMが途切れる。やはりきたか。店主め、俺がジュークボックスに興味を示したのを見ていたな!店側から俺を誘ってきやがったぜ!望む所だ!静まり返る店内、俺はゆっくりと立ち上がり、再びジュークボックスの前に立った。店主に一声かける。「これ、かけてもいいですか?」「いいですよ。お金入れて、3曲連続でボタン押して下さいね」不敵に笑う店主。店主よ、俺をナメるなよ。俺は見た目は体育会系だが、中身は超がつくほどの文化系だからな、コノヤロー。心に決めていた3曲を手際よく押す。A面が上の段で、B面が下の段だ。しくじるなよ。

選曲を終えて席に戻ると、デカいハンバーガーが出てきた。バーガーにファースト・バイトを決めた所で、ディッキー・ベッツが奏でるギターのイントロが流れてきた。


Allman Brothers Band - Ramblin' Man

 

俺が一曲目に選んだのは、オールマン・ブラザーズ・バンドのランブリング・マンだ。

残念ながらオールマンは、このシングルしかなかった。B面はポニーボーイだ。オールマンを選んだ理由・・・それは、最近亡くなったグレッグ・オールマンへの追悼だ。

 アメリカンな店内と、昼下がりの暇暇タイムにマッチした、我ながらレイドバックしたいい一曲目の選曲だと思う。

 

2曲目、おなじみのイントロがレイドバックした空気を切り裂く。


Derek And The Dominos - Layla

 

デレク&ドミノスのレイラ。デレク&ドミノスもこのシングルしかなかった。B面はアイ・アム・ユアーズね。この選曲には理由がある。ランブリングマンに足りないもの。それは、グレッグの兄貴、デュアン・オールマンのギターだ。ま、どっちがクラプトンで、どっちがデュアンが弾いてるのか俺には全くわからないのだが、わかってるような顔をしてコーヒーをすする。残念ながらシングル・バージョンは、ボビー・ウィットロックのピアノが始まる前にフェードアウトしてしまう。

 

3曲目、正直、これは悩んだ。ジョージ・ハリスンもおもしろいな・・・と思ったが、あいにくヘイ・ジュードしかなかった。悩んで壁を見ると、あの人がギターを抱えて歌っているポスターが目に入った。


David Bowie - Starman

デビッド・ボウイのスターマン。ランブリング・マンが、最後、スターマンになった。

 

かくして、俺の魂の3曲勝負は終わった。

 3曲の演奏が終わり、しばらくすると、店内にはメタリカのキル・エム・オールが大音量で流れ出した。

 

お勘定の時に、店主から

「なかなかいい選曲でしたね。あなたの選曲、物語がありましたよ。ランブリングマンからレイラの流れ、オールマン・ブラザーズのパズルが完成した感あって、涙出そうになっちまったよ、まったく。恐れ入りました。ところで、バンドでもやってたの?」などと聞かれる事も無く、無言で1,000円払って店を出た。思いがけず昼飯を2回食っちまったので、今日は晩飯抜きだな・・・。