ダストわくせい

妻より、「出勤ついでにゴミを捨ててきて」と頼まれる。「あいよ」と二つ返事で答える。最近では、どこの家庭でも見られるごく当たり前の風景だが、昔は違った。かつて、男にとって出勤とは戦場への出陣だった。「一家の主が戦場へと出陣するついでにゴミを捨てる」という感覚が、世の日本男児にはなんとも許し難かったのであろう。もう昔の話だ。

僕の場合、ゴミ置き場の場所がちと遠い&車通勤の為、ゴミを車の助手席に乗せなくてはならない。なぜ助手席かというと、後部座席に乗せた場合、車の中で考え事をしているうちにゴミの存在を忘れてしまい、会社までゴミを連れていってしまった事が何度もあるからだ。帰宅時に車のドアを開けた時に気づくのだが、夏場などその悪臭が物凄く、車内が悲惨な事になる。昭和のオヤジのような「ゴミを捨てる行為に対するストレス」は無いのだか、「愛車の助手席にゴミを乗せるストレス」は、日に日に肥大化していて物凄く大きくなっている。なんとかせねばいかん。

 

仕方がないので、ゴミと不倫をする事にした。朝、妻に手を引かれてやってくるテレサ(ゴミ)。妻は、私とテレサ(ゴミ)が不倫関係にある事を知らない。妻子を裏切って幸せ家族を演じている背徳感にゾクゾクする。まさか、俺の不倫相手がこのゴミだとは誰も思うまい!

私はテレサ(ゴミ)の手を握り、車の助手席の前までエスコートし、ドアを開けてあげる。テレサ(ゴミ)を豪快に抱き抱え、助手席に優しく着座させてあげる。小さな声で、「ここで大丈夫?」とテレサ(ゴミ)に声かけする。テレサ(ゴミ)が頷くのを確認し、ドアをそっと静かに閉める。運転席に回り、キーを回す。カーステからは、重低音強めの音楽が流れ出す。重低音は、テレサ(ゴミ)が座るシートを揺らし、テレサ(ゴミ)の下半身をビリビリと刺激する。

 「いつもの黄色いスーツ、よく似合ってるね」

テレサ(ゴミ)は無言だ。

「少し痩せた?」

「あなたが週末、家族旅行に行ったからよ」

「週末は家族と過ごすって約束だろ」

「私はいつも火曜と金曜の朝だけ。こんな関係、もう嫌よ」

「そんなこと言うなよ、テレサ。また溜まったら出してあげるから」

「 溜まったら出して、溜まったら出して、いつもその繰り返し。あなたの目的、それだけじゃない」

「泣かないで、テレサ。そんなことないよ。君は僕の心の支えだよ」

「うそ、うそ。嘘だとわかっているけど、私、いつもあなたの嘘にすがってしまう」

「・・・テレサ

いつもと同じ内容の会話のやり取りをしているうちに、テレサのマンションに到着する。

「たまには上がっていったら?」

「いや、会社があるから」

「そうよね。前は会社に連れて行ってくれた」

「あ〜、もうゴメンだよ」

「あの時は楽しかったわ」

「落ちついたら、ゆっくり温泉でも行きたいね」

「期待しないで待ってるわ」

「さ、もう行かないと」

「そんな、私をゴミを見るような目で見ないで!」

「ゴメン、ゴメン。ゴミだなんて思ってないよ。さあ、お別れだ」

「お別れなんて言葉、使わないで。また金曜日、待ってるわ」

「ああ。いつもの時間に、いつもの場所で」

言い終わると僕は、テレサを強引にシートから引きずり降ろし、軽く後ろにテイクバックのムーブをつけた後に、テレサをうず高く積まれたテレサの山の上目掛けて思いっきり投げつけ、テレサを捨てた。