悪意という名の街

出張で。恵比寿駅に降り立つ。駅の発着メロディ、第三の男だ!

「先輩、なんでこれ第三の男なんですか?」

「え?これ、エビス・ビールのCMの曲だろ。あ〜〜今日みたいにクッソ暑い日は、生ビールでぐー〜っといきたいね〜」

恵比寿ガーデンプレイスですか?」

「ああ?そんな洒落た所で飲めるかよ。ハードロック・カフェ一択だろ!」

「ですよね・・・」

そうか、世間ではこの曲は、ビールのCMの曲なんだな。そう思うと、少し怖くなる。恵比寿駅で皆、喉を鳴らしているって時に、僕は「第三の男」の意味深なラストシーンを思い出し、少し寂しい気持ちになり、とても酒飲んでる場合じゃないメンタル状況でドンヨリしてるってのに。

どうして恵比寿で第三の男を流しているか、ちょっと調べてみた。昔は、恵比寿ガーデンプレイスの場所にエビスビールの工場があり、恵比寿駅からビールの出荷をしていた。恵比寿駅の駅名の発祥は、エビスビールからだったのだ。ふむふむ。

では、なぜ第三の男のテーマがエビスのCMに使われたか。実はこれが謎なのだ。色んな説があるが、真相はわからない。ふむふむ。

と、調べていたら、俺の興味と想像力を完全に釘付けにする興味深い話がウィキペディアに載っていた。

「エビスはロシア語で女性器を意味する」

とある。ムムっ。

そうなると、エビス駅だとか、エビス・ガーデンプレイスだとか、言葉の持つパワーが俺の中で全く違って響いてくる。恵比寿、色んな意味でロシア人男子にはたまらないだろうな〜。どうりで辺りにはニヤついたロシア人が多いと思ったぜ。かくいう俺も、なんだかニヤつきが止まらなくなってきた。さっきまで頭の中にいた不敵な表情のオーソン・ウェルズも、並木道で去りゆくアリダ・ヴァリをただただ見つめるしかないジョゼフ・コットンも、もうどこかにいなくなってしまった。

嫌がる先輩を無理矢理エビス・ガーデンプレイスに連れていき、エビス・ビールをなめるように平らげた。