擬態の流儀

休日の朝は、洗濯物を干す。昭和の男の仕事じゃないだろ?って。一人暮らしが長かったので、さほど抵抗は無いさ。クラフトワークなんかの普段あまり聴かない機械的な音楽をかけると、妙に作業がはかどるのも、よい。

 んで、洗濯物を干す作業における僕の仕事の流儀は、「妻の下着をどこに吊るすか」というポジション取りにある。いや、このポジション取りが全てだ。映画「ジャッカルの日」の主人公の如く、このポジション取りに命をかけているといってもいい。

洗濯物の量が多い時は、大きな洗濯物の間に挟んで、妻の下着を隠す。僕はこの技法を「コバンザメ」と呼んでいる。洗濯物が少ない時は、似た色の洗濯物に妻の下着を重ねて、擬態させる。僕はこの技法を「カメレオン」と呼んでいる。妻の下着の色によっては、一見、Tシャツの柄?と思わせるようにTシャツに密着させて擬態させる。僕はこの高等テクニックを「ハナカマキリ」と呼んでいる。

いつものようにクラフトワークを聞きながら作業していると、いつになく派手な妻の下着が発掘された。こ、こ、これは、今まで見たことがないぞ。新種だ!今日は洗濯物の量が少ない。コバンザメは使えないぞ。さて、どうしたものか・・・という困惑と同時に、「こいつを特出しで干して、アピールしてやりたい」という黒く黒すぎる闇色の欲望が、夏の空を侵食する積乱雲の如くワラワラと拡大してきた。その欲望を必死に振り払い、新技「ムラサキシャチホコ」をキメて仕事を終えた。

仕事の後のコーヒーは、格別に美味い。