グレート・プリテンダー

朝っぱらから、目覚ましテレビという低俗な番組(※僕の中では最上級の褒め言葉ですよ!)を見る。毎日6時50分頃からはじまる酷く低俗な情報コーナー(※褒め言葉です!)。今日は、低俗の極みである男子待望の水着特集(※褒め言葉ですからね!)だった!「うおー、朝から水着キターー!!」と雄叫びを上げ盛り上がる父。テレビの前で仁王立ちだ。昔はちーともノってこなかったってのに、最近は一緒に「ワーイ」と盛り上がりまくる小学生組。その光景を見て、呆れ返る妻。「どこ〜にでも〜あるような、家族の風景」という永積タカシのかすれ声が、どこからともなく聞こえてくるようです。

思い起こせば、私の父は無口で大人しく、こういった場面では硬直してただただ無言でテレビ画面を見つめているだけの人間だった。幼い私は、どうリアクションしていいかわからず、非常に居心地悪い思いを抱えながら茶の間でじっと耐え忍んでいた。だから私は、「こんな時の、正しい男子のリアクション」を、敢えてオーバーアクションで演じてみせる。そう、私は悲しきプリテンダーだ。だけど、こういったリアクションを率先して取って見せる事こそが、父親としての正しい教育姿勢であり、男だらけの家族内の父親の使命だと俺は強く思っている。

今年の水着のトレンドは、「前から見るとワンピースなんだけど、後ろから見るとビキニ」っていう水着らしい。

「うお、この水着、最高じゃーん」俺。

「え〜、普通にビキニの方がいいんじゃないの?」妻。

「裸の方がいい」息子。

「いや違うぞ、君達。それは違うぞ。言うならば、裏返しの美学なんだよな。まるで花札をめくる時のような高揚感、ま、君達に分かりやすく言うと「俺のターン!」って力強く宣言した後に、鬼強いカードを出してくる感じ。そういうワン・テンポずらしてくる焦らしの美学なんだよね〜」俺。

「言ってる事、全く分からない」息子。

「それなら、後ろがワンピースで前がビキニの方がいいんじゃない?」いつになく食い下がる妻。

「それだと侘び寂びが無いんだよな〜。なんつったらいいのかな・・・前は恥ずかしくて隠してるんだけど、実は後ろは隠してないというビックリ感。あれ?なんだろ?この感じ?どこかで感じた懐かしい感覚だぞ・・・思い出した!裸エプロンだ!」俺。

「もうヤダ・・・」破壊力ある単語にドン引く妻。

「バカか・・・」長男。

「あ!テメー今、父親の事、バカっつったな、コラ。エロは許すがバカは許さんぞ」俺。

 そう、俺は悲しきプリテンダー。妻に呆れられようが、息子にバカと罵られようが、いつも道化を演じることで、こうして家族を盛り上げているのだ。

ひと演技終えた後の朝のコーヒーは、格別に美味い。