見てる

山手線で、サングラスをかけた女性が僕を見てる。いや、正確にはグラサンの奥の目が果たして僕を見てるかどうかは確認できないが、恐らく見てる。長身で色白、茶色い髪、外人か?ピンクのタンクトップ、胸は大きい。やたら大きい。

まだ見てる。狭い車両内、試しにちょこっとだけ移動してみる。やっぱり見てる。

ちょこっとだけ移動して、ふと気がついた。女性の対面に座ってるオッさん、思いっきり女性の胸を見てる。僕だって見たい。でも僕に向けられる女性の視線が隙がなく、なかなか女性の懐に入れない。一方、オッさんは、ノーガードになった女性の懐に入りこんで、ボディブローを連打している。なんとか女性にオッさんがボディをタコ殴りしてるぞって事を知らせる方法はないのか。見てる。まだ僕を見てる。僕はオッさんを見てる。オッさんは女性を見てる。この三竦みの状況が2駅ほど続く。

均衡を破ったのはオッさん。僕の蔑むような視線に気付き、こちらをキッと睨みつけてきた。なんだかバツが悪くなり視線を逸らすと、女性はまだ僕の方を見てる。いったいこの女性は何なんだ?誰だ?知り合いには、こんなタイプの人はいない。今までの人生で交わった事もない人に、ここまで見られた経験は無い。もしかしたら、僕に似ている他のヤツと間違っているのかもしれない。いや、もしかしたら、僕に一目惚れして勝手に運命感じてるのか?って、オッさんまだ俺を見てるよ。女性とオッさん、2人とも僕をロックオンしてる。僕の目は、右に左に泳ぎっぱなしだ。この状況でさらに2駅通過。

僕の降りる駅は次の次。次は乗客がごっそり降りる新宿。ここで女性が動いた。僕から視線を逸らさずに、電車を降りていった。

僕は、残されたオッさんの隣に座り、窓の外からギラギラと照りつけるあの憎たらしい太陽を見た。