バーディ

昔、近所に老夫婦が経営している駄菓子屋があった。老夫婦には子供がいなかった。だから2人は、子供達がたくさん集まる駄菓子屋をはじめたのだと思う。だが、ニューヨークのブロンクス並に住民の質が悪かった我が町は、当然タチの悪いガキ共ばかりで、クジの不正、万引きなどは当たり前。レジの釣り銭泥棒、さらには老夫婦に対する暴力、不法浸入など、ガキ共の狼藉はガキの成長と共にエスカレートしていった。子供ってのは、残酷で全く可愛くない生き物だと気づいた老夫婦は、店の泣け無しの儲けをはたいて九官鳥を飼う事にした。

しばらくして、九官鳥が初めて話した言葉群は、

「クソババ〜」

「ウンコー」

「ジジィ◯ね〜」

だった。

やがて九官鳥は、店からひっそりと姿を消した。(悲しい事に、この話は実話である)

 

 

僕は病気で外に出られない。学校も行けないから、お母さんが僕の先生だ。友達も話し相手もいない。そんな僕を気遣ってか、誕生日にお父さんが九官鳥を買ってくれた。嬉しかった。僕は九官鳥の名前をレイナードと名付けて、毎日、毎日、一日中、話しかけた。やがて、レイナードが話しをするようになった。話す言葉は、「こんにゃにゃちわ〜」と「ういうい、ごはんちゅぶがく〜いたいよ〜くれ」だけだった。

ある日、いつものようにハナクソをほじりながらドラゴンボールを読んでいると、レイナードが話しかけてきた。

ブッポウソウブッポウソウブッポウソウブッポウソウと殺したのは誰ですか?」

「え?」

鳥人間に近づくな。ブッポウソウと近づくな」

「レイナード、どうしたの?」

「黙れ、クソガキ。ファッキン・ジャップくらいわかるんだよ、コノヤロー」

「れ、レイナード?」

「立ち上がれ、少年。書を捨てて、街に出よ」

「レイナード?」

「闘え、少年。鳥人間を打倒せよ!責任者出てこい〜」

 「レイナード、どうしたの?」

「この、部屋という牢獄から飛び立て、クソガキ!責任者出てこい〜」

「レイナード!」

その日からレイナードは一言も話さなくなった。

僕は、ひっそりと外に出る準備をはじめた。鳥人間に偽装する為、家の羽毛布団で翼を工作しはじめた。

完成した翼を纏った姿を鏡に映す。鏡越しにレイナードと目が合った。僕は、レイナードが少しだけ微笑んだような、そんな気がした。