ブラックバード

夕暮れ時、たまに大量の鳥の存在に気づいてハッとする時、ありませんか。木や送電線にびっしりとたかる鳥の群れ。まるで、あの有名な監督のあの映画のようではないか。鳥!40代後半より上の世代の方達は、怖い字体で書かれた「鳥」の文字バックに、淀川長治のこれまた怖い顔と震えた声によるオドロオドロしい前説がフラッシュバックして、とてつもない恐怖感を覚えるはずである。

都会で群れをなしている鳥は、いわゆる害鳥ってやつらだ。人間による森林伐採などの開発で、住処&エサを失った野生の鳥達が、都会に新たな生活の場を求めて移鳥してきたのだ。今、俺の頭の中では、ロバート・プラントの「アアア〜〜・ア 、アアア〜〜・ア」って叫び声が、何千匹もの鳥達の羽ばたきに合わせて何度も何度も再生されている。鳥達は、ロバート・プラントの絶叫に乗せて、フンや騒音を撒き散らし、街に甚大な被害をもたらす。まあ、当然のツケだわな。

 

とある自治体で、永年悩まされていた害鳥被害に対する対策費が、鷹匠に依頼する事で安価で解決したというニュースを目にした。でもこれって、害鳥が他の街に移動したってだけで、根本的な解決に繋がっていないのでは?と思う。じゃあ、どうすればいいんだよ?

個人的には、鳥を受け入れるしかないと思う。鳥の大群を引き受け、生活環境を作ってやる。フン害?掃除しましょう!騒音?そのうち慣れるさ!

と見せかけて、毒餌などにより裏で少しづつ鳥を間引いていく。いつの間にか、鳥はいなくなっている。皆、鳥の事は忘れる。

それがお前らのやり方か?

そういえば、最近、移民のニュースも聞かないな・・・。

 

 

鷹が好きだ。鷹匠になりたくて、弟子入りした。だが、そう甘いものではなかった。鷹が自分に慣れてくれないのだ。腕にとまってもくれない。

「あんた、むいてないな」

無口な匠が口を開いた。

「なぜですか?自分はこんなに鷹を愛しているのに」

「いくらあんたが好きでも、鷹の方があんたを認めねぇ。本能があんたを拒否してる」

「本能?」

「ああ。気難しい信長号、慎重な家康号は仕方ないとして、比較的寛容な秀吉号まで、あんたを嫌っちまってる」

「匠、だいたいなんで鷹に天下取った武将の名前つけてるんですか?もっと従順な武将がいるじゃないですか。島左近とか、加藤清正とか」

「うるさい、うちの鷹は代々この名前なんだよ」

頭にきた。こうなりゃ、強行手段だ。次の日から、ポケットに物凄い高い高級肉を忍ばせ、鷹にこっそりと与えてやる事にした。すぐに、鷹は私の腕にとまるようになった。私の急速な成長に、匠は不思議がった。ザマアミロ。こいつら、所詮は畜生よ。

ある日、いつものように自治体から害鳥駆除の依頼が舞い込んだ。匠はインフルエンザで体調を崩しており、私が出かける事になった。よし!デビュー戦だ。大丈夫だ、いまや鷹は、私にすっかり懐いている。

車で現場につくと、いるいる。鳥の大群だ。よし、一発ガツンとかましてやるぜ。籠から鷹を出し、腕にとまらせる。「セイヤー」の掛け声と共に、鷹を飛び立たせる。勢いよく飛び出した鷹は、害鳥の群れ目掛けて一直線に突っ込んでいく。単騎特攻だ。この際、(これは私流の指示なのだが、)「ぶっこめぇ〜」と力の限り叫び、鷹を鼓舞する。害鳥は、鷹の突然の襲撃を受けてパニックに陥る。パニックは他の鳥にも伝播し、蜂の巣を突ついたような大騒ぎだ。私は、この様子を見るのが好きだ。いつも心の底から笑いの衝動が吹き上がり、その衝動に身を任せて大爆笑してしまう。

と、鷹が突然トンボを切り、私を目掛けて急降下してきた。なに?鷹は、私の目を目掛けて猛スピードで迫ってきた。ガツっ!鷹の鋭いクチバシが、目を庇った私のこめかみの部分を鈍くえぐった。痛ぇ。手で抑えると、ビチャビチャの液体がびったりと手についた。血だ。

「裏切ったな!秀吉め!」

思わず叫ぶ。と、さっきまで散り散りに逃げまどっていた害鳥が一気に集団となり、私を目掛けて急降下してきた。

 

バーーン

 

一発の銃声により、鳥達はまた散り散りになって逃げた。

助かった。

逃げた鳥の群れの中に、なぜか一羽の九官鳥が混ざっていた。九官鳥は私の近くの木にとまり、掠れた声でこう言った。

「ファッキン・ジャップくらいわかるんだよ、コノヤロー」