土曜日の夜

日曜日の夜に、土曜日の夜に聴きたくなる音楽を聴こうかな。聴こうよ。

 

土曜日の夜

土曜日の夜

 

 

イントロの、都会の雑踏の中に響く「ファー」っていう車のクラクションの音を聴いただけで、物凄く切ない気持ちになっちゃうんです。あのクラクションの音、もしかしたら僕が人生で耳にした音の中で一番切ない音かもしれない。独りぼっちの土曜日の夜に、ロックグラスに普段飲まないバーボンをちょっとだけ注いで、その上にポトンと落とした丸く削った氷塊を、指のマドラーでかき回しながら、そんなことしてる自分を夢想しながら、この歌を何回も聴いていた。正直言って俺には、トム・ウェイツの如く土曜日の夜の恋人を探しに、めかしこんで土曜日の夜の街に繰り出す勇気も気力も無かったよ。氷を削って、ビーフジャーキーを炙って、酒をグラスに注ぐ気力すら無かったよ。ただ、部屋で一人でベッドでエビ型になってダウンしていただけだ。

この曲が入ってるアルバム、名盤だよね。でも、アルバムジャケットが本当に残念な感じの絵画で、なんであのジャケットなんだろうなって、いつも思ってた。いやいや、あれはあれで味があっていいジャケじゃないかって、言い聞かせてた時期もあった。でも、あれでスモールチェンジのジャケットだったら、たちまち大大大名盤にアップグレードされちまう事だろう。アルバムの後ろ側に載ってる写真でもいい。なんでこっちがジャケじゃないんだろうか。あの絵、おそらく土曜日の夜の歌詞をイメージ化したものなんだろうけど、歌詞に出てくる「微笑を浮かべてこっちをみてる水商売の女」があの小太りで憎らしい顔をしたババアというのは、いかがなもんだろう。俺の中では「微笑を浮かべてこっちをみてる水商売の女」は、フェイ・ダナウェイじゃないといけない。強制的にあのババアを連想させてきやがるのは、本当に迷惑なのでやめてほしい。

フランス映画が好きな女の子、ジャズが好きな女の子、ピアノが好きな女の子、酒が好きな女の子、朝日に目を細める女の子、コーヒーを上手に淹れる女の子、シオンが好きな女の子(もっともそんな奴はいなかったが)・・・ちょっとでもトム・ウェイツ好きそうな要素を持った女の子と出会った時、手当たり次第にアルバム「土曜日の夜」を貸していた時期がある。でもやっぱり、あのジャケットに拒否反応を示し、明らかに聴かないで返してきた女の子、多かったな。多分、あのババアのせいだよね。