ラッキー7

20年間乗っていた車が故障気味だったので、車検を前に思い切って新車を購入した。

「車両ナンバー、いかがします?今、好きな数字が選べるんですよ」

車屋さんでそう言われる。最近、ツイテないからな〜。その場のノリで、777にした。ラッキー☆スリー7だ。7回裏にジェット風船でも飛ばしたろか。

 

新車に変えてすぐ、後から追突された。

クソっ、ツイテない。

ぶつけてきたのは、黒塗りのイカツイ外車だ。よりによって厄介そうな車だぞ。

まったくツイテない。

外車の扉が開くと、黒いミニスカートからスラリと伸びる白く長い脚、綺麗な長い髪のとても美人な女性が、心配そうな顔をして降りてきた。その瞬間を正確に表現するならば、ペキンパーの映画のようにスローモーションでドアが開き、スローモーションで綺麗な白い脚が車から出てきて、スローモーションで女の長い髪が風になびいた。

 お?ツイテる?

「スミマセン。オカマ掘っちゃいましたね。大丈夫ですか?」

美人の口から飛び出した、その麗しき唇から発せられるにはふさわしくない「オカマ掘る」という下品なワードに、ゾクゾクする。

うん。ツイテる。

初めて嗅ぐいい匂い。これ、なんっつうシャンプーだ?

ああ。ツイテるよ。

「じゃあ、車寄せて、警察呼びましょうか」

「あの・・・」

突然、顔を曇らせて、モジモジし出す美人。

美人のモジモジに、俺は弱い。

ツイテる。

「どうしました?」

「あの・・・あの・・・お願いなんですけど、警察は呼んでほしくないんです」

「はあ?」

潤目でこっちを見つめる美人。

ツイテ・・・る。の?

「でも、事故証明取らないと保険が・・・」

「私が全面的に悪いので、もちろん車の修理代はこちらでお支払いますし、あなたの医療費も全額お支払い致します」

「はあ」

ツイテる?の?

僕の苦手とする『美人の切羽詰まった強引な押し』に寄り切られ、とりあえず美人と連絡先を交換し、その場は別れた。

連絡先ゲット。

ツイテる!

美人からもらったピカピカ光る分厚い名刺には、エステ店の代表取締役の文字が印刷してあった。

「男性も大丈夫なので、よかったら今度、いらして下さい」

ツイテる!

 会社を半休し、病院へ。レントゲンを取る。医者の診断は、

「異常は無いんですが、念のためムチウチにしときますか」という、なんともテキトーな診断。

ツイテる?

しばらくリハビリに通って下さいと案内されたリハビリ室には、ミニスカートにやたら胸の部分が強調された制服を着た看護婦が笑顔で出迎えてくれた。

ツイテる。

室内には、なんだかやたらと中年男性が多い。まあ、わかるよ。うん、わかる。

 

翌日、美人の携帯に電話をすると、繋がらない。会社の方に電話をすると、「この電話は現在使われておりません」のメッセージ。

ツイテない⁉︎

名刺に印刷された住所のエステ店に行ってみると、そこはインド料理の店に変わっていた。

ツイテない!

仕方がないので、インド料理でカレーを食べた。涙が出てきた。悲しくて情け無くて、いやそんな理由じゃないんだ。辛さ10倍で頼んだ激辛カレーのせいなんだ。

支払いの時に引いたスピードくじで、ナン無料券が当たった。

ツイテる!