スライダース

職業柄、プレゼンテーションをする機会が多い。プレゼンでは、関西仕込みの「ちょいちょい笑いを挟みながら進めていくスタイル」を貫いている。一部では評判がいい。だが、ある日、こういった評価をいただいた。

「君のプレゼン、面白いんだけどさあ、なんか聞き苦しいっていうか。やっぱりプレゼンは、オネーチャンの声の方がいいんだよな」

オネーチャンの声。これだけはどうしようもないだろ。俺の声質は、ルー・リードに近い。

 

出張時に、新幹線の後ろの座席で、透明感のある美人な2人組が、透明感あるペチャクチャくっちゃべりをずっとずっとずっとしていた。その耳たぶをこしょこしょとくすぐってくるようなこしょばいペチャくっちゃりは、非常に耳心地が良く、あ、オッサンが言ってた「オネーチャンの声」ってこのペチャくっちゃりの事かと思った。

 

我が声色を女性声に変える為には、陰茎を切断する必要があるらしく、その願いは断念せざるをえなかった。仕方がないので、プレゼンのスライド間にジェーン・バーキンの「ジュテ〜ム」とか、アニー・レノックスの「マスビートーキントゥーエンジェ〜マスビートーキントゥーエンジェ〜マスビートーキントゥーエンジェ〜」とかジョニ・ミッチェルの「トラベリン、トラベリン、トラベリン、トラベリン」などの音声を、聞こえるか聞こえないかギリギリの音量で挟み込んだ。スライドが切り替わる度に、これらの声らしきコチョコチョ音が流れる仕組みだ。これは、あのスティーブ・ジョブズも考えつかなかった聴衆を惹きつけるプレゼンテーションの新たな手法の一つである。

 

 すっかり有名になった僕は、日本中でプレゼンをするまでになった。毎日、多忙な日々で、プレゼン作成が間に合わない。仕方がないので、バイト君にスライド間に挟む音入れを頼んだ。

「自分、洋楽わからないんすけど」

「大丈夫、大丈夫。ジャケットに綺麗なネーチャンが写ってるやつから、テキトーにサンプリングしといて」

「はあ」

「お前好みのネーチャンでいいからね」

「はあ」

 と、仕事投げっぱなしジャーマン状態でいた。

いつものようにプレゼンしていて、驚いた。「ラ〜ヴィ〜ザ・ドラッ〜〜グ」だとか、「アイウォントゥライマイ・バイセーコー」だとかオッサンの歌い上げ系の効果音がスライド間にチョイチョイ挟みこまれているではないか。しまった。忙しさにかまけて、チェックを怠っていた。

しかし、このプレゼンが大ウケ。

本日は、人間万事塞翁が馬という事例発表でした。ご静聴ありがとうございました。

 

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