心の反射神経を鍛えよう

馬鹿にされる。舐められる。相手のペースでいいようにやられる。脅されて押し切られる。現代社会を生きていて、こんな事が多すぎるよ。完全に馬鹿にされているっていうのに、その時は気づかず、後になって猛烈に怒りがこみ上げてくる事が多々ある。気づいた時には、もはや手遅れ。1人でストレスを抱え、暴飲・暴食・暴セックスを繰り返し、余計にストレスを溜め込む毎日だ。恐らく俺の前世は草食動物。今まさに肉食動物に食らいつかれてるってのに、その事にさえ気づかない種の愚獣だ。

 

ある朝、新聞を読んでいたら、「心の反射神経を鍛えよう」という、まさに今の自分の弱点をストレートに突いてきたあざといセミナー広告が載っていた。その謳い文句は、こうだ。「体に運動神経や反射神経があるように、心の反射神経も存在します。心の反射神経を鍛えて、スッキリ生活!」

このセミナー、色んなコースがあるようで、

クレーマー対策

・子供の叱り方

・上司のパワハラに抗う

・理不尽な言論への反論集

など、タイムリーなネタ満載だ。さっそく申し込んでみた。

 

室に通されると、無愛想な教官がアゴで座る席を指し、座ると分厚い教本を机上にデンと置いた。「これ、読んで」と言ったっきり、教壇でスマホを弄ってる。

「あの・・・」

「なに?質問?後にして」

仕方なく教本を読む。教本の内容が意外に面白く、黙々と読み進めていた。

小一時間ほど経つと、教官が笑顔で、

「あなた、重症ですね。これは鍛えがいがありますよ」と肩を叩いてきた。

やられた。怒りがこみ上げてきた。教室を飛び出し、僕は走っていた。全力疾走なんて、いつ以来だろう。昔は、いつだって全力疾走していた気がする。今は、セーブして走ってる。後頭部のそのまた奥から、歌が聞こえてきた。ハローハローハローハウロウ、ハローハローハローハウロウ、マーイマーイヘーイヘーイ、ヘーイヘーイマーイマーイ、ドゥワゼトージャ、ドゥワゼトージャ、ドゥワゼトージャ、ドゥワゼトージャ!

足がもつれて、すっ転んで空を見た。綺麗に澄んだ青空だ。雲がゆっくり流れてる。その時、ボブ・ディランでもジョン・レノンでもボブ・マーリーでもない歌が聞こえてきた。こんな生き方だって、いいじゃねぇかよ。