拝啓 ジョン・マクレーン

ダンディになりたい。今の所、なれてないぞ。

ダンディなオッサンは、独特のオーラを纏っている。恐らく、裏で物凄く努力してる。シャツからのぞく腕の筋肉、ジムに行って身体を鍛えているんだろうなあ。浅黒く焼けた肌、日焼けサロン行って焼いてるんだろうなあ。高価そうなスーツ、服屋に行って店員と色々会話しながら選んでいるんだろうなあ。綺麗に整えられたヒゲ、あの泡のやつで毎日手入れをしているんだろうなあ。ピッカピカの時計、雑誌を購入して情報を色々と仕入れてるんだろうなあ。ああ。

 

 

俺の首からぶら下げた社員証の写真を見た取引き先のアイツが、

「え?これ、◯◯さんですか?いつの頃の写真ですか?昔は痩せてイケメンだったんですね〜。これ、また痩せなきゃダメですよ!」

と言う。

「何でよ?」

「何でって、その方がモテるでしょ」

「モテてどうするよ。もうカミさんもいるし、子供もいる。仕事も女性を相手にする仕事じゃないし、モテるメリットが一つも無い。人生も残り少ないし、俺は好きなモノたらふく食って、ビール浴びるほど飲んで、ダラダラと寝っ転がってロック聴いていたいんだよ」

「そんなもんすかね。俺、キャバクラでモテたいっす」

「お前とは価値観が違うんだよ」

 

ある日、営業先のビルのエレベーターの中に閉じ込められた。中には、ダンディなオッサン、足がスラッと伸びた綺麗系のOL、俺の3人だ。ダンディがインターホンを連打するが、通じない。これって、安っいドラマとかでよくあるシチュエーションじゃないかよ。

停止から3時間半が経過。暑い。とにかく暑い。ダンディは既に上半身裸だ。日焼けした肌と鍛えられた筋肉。ほのかに香るオーデコロンまじりの爽やかな体臭。おい、こんな身体を先に見せつけられたら、この俺の白ブタのようなボディ、晒せないだろ。さっきから美脚OLのネーチャンはダンディとしか話してないな。優しい声掛けで美脚を励ますダンディ。2人ともまるで、俺の存在は視界に入らない感じ。入れたくない感じ。俺の存在自体が邪魔な感じ。俺がこのエレベーターの室温を上げちゃってると言わんばかりのプレッシャー。ああ、今、「3人のうち誰か1人殺す」となったら、あっさり俺に決定する感じ。お前達に殺されるくらいなら、腹かっさばいて自害してやるよ。ああ、苦しいな。できる事なら、今すぐエレベーターの壁になりたい。

突然、ダンディが俺に話しかけてきた。

ダイ・ハードって映画、知ってますか?」

「あ、はい」

知ってるわ。お前の何十倍も見てるわ。パート3もパート4も見てんだからな。

「あの映画で見たんですけど、エレベーターの天井って開くんですよね」

「はあ」

「これ、上を開けたらちょっとは涼しくなるかなあって思ったんです」

だからなんだよ?開けたらいいだろうが。え?届かないって?俺に踏み台になれって?なんだよ、美脚、そのナイスアイデア!って顔は。ああ、わかったよ。なればいいんでしょ、踏み台に。壁じゃなくて踏み台に。

小さく丸めた背中の上をダンディの足が踏みつける。メリ込む背肉。あ!今、クッションみたいだなって思われた?チクショウ、まったくツいてない日だ。何で俺だけこんなヒドイめに会うんだってんだよ。チクショウ。

Dandy

Dandy